能登半島地震では津波や地盤隆起により多くの漁船が被災した。石川県内で200隻以上が座礁や一部損壊し、多くは操業再開の見通しが立たない。「何とか沖に行けるようにしたい」。七尾市の「鳥毛造船所」社長、鳥毛嘉秀さん(59)は地震前に受注していた分を後回しにして、被災船の修理に全力を傾ける。
鳥毛さんの工場でも建造中だった50トン超の船が倒れたほか、船を陸揚げするためのレールが曲がるなどの被害が出たという。それでも「うちはまだいい方。漁師の生活が懸かっている」と、漁業者を気に掛ける。
外板が壊れるなど、浸水の恐れがあれば修理は必須だ。しかし、県漁業協同組合小木支所参事の坂東博一さん(53)は「各地の造船所が逼迫(ひっぱく)してすぐにはできない」と説明。新たに船を調達する場合、「操業を始めるには2年以上かかるのではないか」と懸念する。実際に廃業を決めたり、再開の見通しが立たなかったりする漁業者も多いという。
こうした状況に、鳥毛さんは「できる限り船を直す」と意気込む。2月中に輪島港で現地調査を始め、修理が必要な船に応急処置を施して造船所のある七尾港まで移送。1日当たり2~3隻を修理する予定という。
新造船の工期は通常6カ月だが、修理により2~3カ月は遅れる見込みといい、発注主には事情を説明して了承してもらっている。それでも「今までお世話になった地元の人の力になりたい」と語った。