宇宙航空研究開発機構(JAXA)は15日、新型の液体燃料ロケット「H3」2号機を鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げる。1号機は昨年3月、第2段エンジンが電気系統のトラブルで着火せずに失敗。搭載していた地球観測衛星「だいち3号」も失われた。
JAXAは三菱重工業などと原因究明に着手。半年余りで対策を取りまとめ、1年足らずで2号機打ち上げにこぎ着けた。開発責任者の岡田匡史プロジェクトマネジャーは「なんとか挽回したいという思いで頑張ってきた。ぜひ成功させたい」と意気込む。
失敗直後から始まった原因究明作業は、他部門やOBも動員した「総力戦」だった。過電流が検知された第2段エンジンの電気系統を中心に、飛行中のデータや製造時の記録、再現試験などを組み合わせて原因を探り、着火装置内の部品のショートなど三つに絞り込んだ。
現行のH2Aロケットの退役が2024年度に迫る中、JAXAは三つすべてに対策を講じることで、早期の打ち上げ再開を目指す方針を選択。部品の絶縁強化や、不要な部品の除外などの措置を取った。
当初の計画では、2号機に「だいち4号」を搭載するはずだったが、1号機の失敗を受けて見送りに。代わりに、だいち3号と質量や重心をほぼ同じにした「性能確認用ペイロード」(高さ約4メートル、重さ約2・6トン)を載せることで、飛行経路や荷重の解析などの期間短縮を図った。
一方で、小型衛星に打ち上げ実証機会を提供。キヤノン電子が開発した観測衛星(重さ約70キロ)と、宇宙システム開発利用推進機構などの超小型機も搭載される。
24年には欧州のアリアン6など、H3のライバルとなる新型ロケットもデビューする。JAXAの山川宏理事長は「原因究明と対策は慎重かつ丁寧にやる必要がある一方、国際競争力確保にはスピード感も必要。極めて重要なこの時期に打ち上げ再開に取り組める」と評価した。