般若心経とくそじじい 磯崎(いそざき)文盛(ぶんせい)

  • ゆのみ, 特集
  • 2024年2月10日
般若心経とくそじじい
磯崎(いそざき)文盛(ぶんせい)

  物事が起きた時に感じるストレスのレベルは人それぞれ違うと言われます。同じ出来事に対して平然としている人がいれば、受け流せたり、拒絶したりする人がいて、人の精神的な部分には気体、液体、固体という「物質の三態」と同じようなものがあるように感じます。

   外に出れば必ずストレスと出合うような現代社会。自分を守るには拒絶が必要になる場合もあります。私は引きこもりになりましたが、自分が柔らかくなれば、ストレスを受けにくくなり、笑顔も増えてきます。最近やっと、相手を変えようとして生きづらさを感じる自分を卒業しようと思うようになりました。

   般若心経では、その過程を「行深(般若波羅蜜多)」と言っているのだと思います。現代人は、江戸時代の人々が約1年かかって得る情報量をわずか1日で得ているといい、日々、真面目に生きているだけで実はかなりの修行になっているはずです。その上、相手を変えようとしたら、それはもう大変。自分を変えた方が早いのです。

   自分を変えていくには、誰かのせいにすることを減らす必要があります。最初はとても苦しいけれど、振り返った時に自分がどれほど大きな心になれたのか、それまでの自分がどれほど生きにくい思いをしていたのかが分かるように思います。

   私は30代にして、勧学館に毎日のように遊びに来る子どもたちに「くそじじい」と言われ、当初は不愉快に感じましたが、今では何も感じなくなりました。気にしなくなってからは、めったにそう呼んでもらえなくなりました。気にしないものは与えられないようで、思い返せば懐かしく少し寂しくもあります。

  (いぶり勧学館館長・苫小牧)

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