厚真町美里の製材加工業、中川貴之さん(41)が自宅向かいの敷地に製材工場を建設した。胆振、日高管内や道央など周辺エリアの木材を生かして顧客の多様なニーズに応えていく。「大きな製材工場に比べ、小回りが利くのが取りえ。使ってくれるお客さんを地道に増やしていきたい」と話す。
新たに建てた製材工場の敷地面積は約120平方メートル。丸太を板状にすることができる機械などを導入し、総額4000万円ほどをかけた。町内で仕入れたカラマツの木を使った外観が特徴で、昨年末には一般にお披露目もした。
札幌市出身の中川さんは、町内で起業したい人を募る町の事業「ローカルベンチャースクール」の選考を通過し、2019年4月に起業型の地域おこし協力隊として着任。家族で移住し、同年に製材や森林整備を手掛ける「木の種社」を設立した。その傍ら、21年には胆振東部地震で被災した木を使って木工品を作るプロジェクトとして、林業従事者らの若手メンバーを中心に「ATSUMANOKI96」を立ち上げ、代表を務める。
町の基幹産業とも言われる林業だが、担い手不足は深刻な課題。かつてはどこにでもあった製材工場も今は数えるほどしかない。中川さんは「近場の山や森林で育った木を切る人も少ないが、地域で産出した木を製材する人はもっと少ない」と指摘し、「せっかく木が育つ環境があるのに取り扱う人がいないのは、林業にとっても地域にとっても損失」と製材加工に懸ける熱意を語る。
「種類、太さ、形、いろんな木があって、ニーズがある。いかに柔軟に応えられるか―。大量生産ができるところと同じことをやっては食べていけない」と中川さん。地元材にこだわり、かつ大きな事業所では扱わないような顧客の要望一つ一つに応じるスタイルを模索する。「原料とニーズのマッチング。その間に入って何ができるか」を追求する毎日だ。