能登半島地震による断水がようやく解消した石川県志賀町の農家で、冬の風物詩であるかき餅作りが1カ月遅れで始まった。作業場にずらりと並んだ餅つき機からは湯気が立ち上る。「今年は諦めとった」と話す白山邦夫さん(80)、フサ子さん(81)夫婦は、つきたての餅を前に「いつも通りきれいにできた」と笑顔を見せた。
かき餅は地元の伝統的な菓子で、夫婦は当初、孫のおやつとして約年前に作り始めた。赤、黄、緑など色とりどりの餅をひもでつるし、乾燥させて焼き上げる昔ながらの製法を守る。「自然にこだわっている」(フサ子さん)という材料は、自家製のもち米、塩、砂糖のみ。素朴な味付けが人気で、「志賀かきもち・あられ」としてふるさと納税の返礼品にもなっている。
例年は1月初旬から節分にかけての「寒の内」に餅を作り、約1カ月間、土蔵で自然乾燥させて3月から出荷を始める。しかし、今年は元日から断水が続き、餅をつけるようになった時には立春が過ぎていた。
ようやく始まった餅作りを喜ぶ一方、気温が12度を超えるとカビが発生しやすくなるため、これまでと同じように出荷できるか懸念もある。それでも全国から販売を待ち望む声が届いているといい、「失敗したらその時。やれるところまでやってみる」。自らを奮い立たせ、夫婦は作業に取り組む。