自由に服が選べた海外
30歳の時の初めての海外旅行は、ヨーロッパでした。
日本とはまったく異なる街並みや文化に刺激を受けました。特に驚いたのは、XLサイズ以上の大きなサイズのすてきな服や下着などが販売されていたことでした。ショーウインドーに飾られたマネキン、ポスターのモデルがプラスサイズのこともあり、さまざまな体形を尊重する意識が感じられました。
日本の場合、お店で買える洋服はMかLサイズまでがほとんど。それ以上のサイズは取り扱いがなかったり、通信販売限定で試着できなかったりする不便さがあります。日本で服選びが難しい私が、ヨーロッパでは気軽にショッピングが楽しめ、うれしくてたまりませんでした。
10~20代で摂食障害になるほどダイエットをやり過ぎた理由の一つは「気に入った服のサイズが自分に合わない」ということでした。中高生の時、友人と一緒にショッピングに行くと、いつも居心地が悪い思いがしました。その頃は体のラインに沿うような、ぴたっとした服がはやっていた時代。ティーンに人気のブランドのお店では、私が着られるサイズの物はなく、お店に入ること自体にためらいを感じたほどです。
限定されたサイズの中から仕方なく選ぶしかなく、好きなデザインの服は買えません。自分の体も、その体を包む服も嫌い。そんな苦い経験を重ねるうちに、「とにかく痩せなければ」という意識が強くなっていったのです。
海外でショッピングを経験した時のように、自分に合う洋服が当たり前にある環境で育っていたら、体に対する自己評価はもっと違うものになっていたのではないかと感じました。
自分の体形に嫌悪感を感じるとき、見直すべきは体より今いる環境なのかもしれません。
(プラスサイズモデル・エッセイスト、吉野なお)