推し、草、ギャップ萌(も)え―。こんな「オタク用語」ばかりを集めた日本初の辞典が昨年月、大手出版社三省堂(東京)から出版され、重版になるなど好評だ。著者は名古屋短大(愛知県豊明市)現代教養学科の女子学生ら12人。ゼミ活動の一環で自主制作し、大学祭で販売したところSNSで話題になり、編集者の目に留まった。
出版されたのは「オタク用語辞典大限界(だいげんかい)」(288ページ、1540円)。国語辞典の名著「大言海」をもじり、学生が名付けた。自分たちが使ったり、周囲で使われたりしている約1600語を「K―POP」「ゲーム」など14項目に分類し、意味や用例を記している。
指導した小出祥子准教授(41)の専門は奈良時代の日本語だが、学生が使うオタク用語に興味を持ち、ゼミ生に辞典編さんを持ち掛けた。「時代の流れで言葉は消えたり変化したりするので、記録する必要があると思った」と経緯を説明する。
自称オタクを含む昨年度のゼミ生7人が、それぞれ好きな「界隈(かいわい)」の用語を収集し、議論しながら解説を執筆。約800語を収めた辞典を2022年11月の大学祭で販売すると、「面白い」と100冊以上が売れた。
今年度のゼミ生5人も改訂版を制作。収録語数は約2倍に増え、書籍化も決まった。三省堂の編集者は「最初は資料として取り寄せたが、学生の熱意が伝わり、広く知られなければもったいないと感じた」と話す。
書籍はSNSなどで注目され、初版の印刷部数を約4倍に増やしても足りず、早々に重版が決まった。一方、「こんなものが辞典と言えるのか」「どうせ遊びだろ」などの批判もあった。
ゼミ生の1人は「当たり前に使っている言葉の意味をどう説明するか悩んだ」と振り返る。ゼミは来年度以降も辞典編さんを続けるといい、小出准教授は「時代による言葉の変化が見えるまで続けたい」と語った。