テレビで、背景に書籍で埋まった書棚を置き専門用語を駆使していろいろな出来事を解釈してみせる人がよく映る。
あれも読みたい、これも買いたい―と書店の棚の前で財布の中身を考えて悩んだことは何度もあるが、書棚を他人に見せる、見られるという機会は無かった。きっとこれからも無い。「蔵書量で人間の価値が決まるなら、本屋さんにかなわない」と書いた評論家が昔、居た。まったく同感だ。日本で最も多い蔵書数を誇る国会議事堂の隣の国立国会図書館を紹介した、数日前のNHK・Eテレの特集を録画で見ながら「蔵書」を考えた。
この図書館は国会議員の議員活動を補助することを目的に1948年に開館したそうだ。国内で出版された書籍や新聞類が毎日、法に基づいて届けられる。蔵書数は現在4700万点。東西135メートル、南北43メートルの資料室は地下8階まであり届いた資料が検索しやすく整理されて棚に収まっている。知の財産を未来に継承するため、資料のデジタル化も進む。
さてわが家の本箱や机の周囲を見て、あぜんとする。乱雑を見かねた家人の整理の虫が目を覚まして仕分けられた棚から、自力で目的の本や資料を探し出すのはもう困難。資料消滅の危機が着々と迫っている。誰にも見られたくない。(水)