発生1カ月となる能登半島地震では全国の自治体職員が被災地に入り、交代で支援に当たっている。体調不良を抱える避難者への目配りや電話のクレーム対応など、帰任した職員は現地で得た教訓を「次への備え」に生かす考えだ。
総務省は被災自治体にパートナー自治体を割り当てる「対口(たいこう)支援」を展開。1月29日時点で1257人が活動する。他に全国知事会や姉妹都市などを通じた人的派遣もある。
静岡市職員厚生課係長で保健師の滝尾依乃さん(51)は、2次避難所である石川県加賀市の宿泊施設で被災者の健康管理を担当した。高齢者の中には「個室で一息つけた」と話す一方、「これ以上迷惑をかけられない」と体調不良を我慢する人も。積極的に部屋を回って声を掛け、「見落とさないよう気を付けた」。新型コロナウイルス患者も増え、静岡市でも「感染症対策は見直す必要がある」と話す。
姉妹都市の石川県能登町役場を支援した千葉県流山市秘書広報課の小林秀亮さん(32)たちは、ガレージに寝泊まりして町のSNSアカウント開設や義援金募集のバナー広告作成に携わった。だが作業時に管理画面に入れず、忙しい町職員にIDやパスワードの入力を頼むことも。支援を受ける事態を想定した「予備のパソコンやアカウントがあれば」(小林さん)と振り返る。
殺到する電話を町総務課職員が全て受けていたことも気になった。情報を求める切実なものだけでなく「日ごろの行いが悪かったからだ」など業務と無関係のクレームもあり、対応マニュアルを臨機応変に作る体制が必要と感じたという。
2016年の熊本地震を経験した熊本県危機管理防災課の有田知樹審議員(51)は、派遣先の石川県庁で義援物資の相談を多く受けた。企業や個人からの申し出を県職員が電話で受けたらどう対応すべきか。当時熊本が決めた受け入れ基準を石川側に伝えるなど、経験を生かした支援につなげた。
有田さんは被害の大きさや職員不足など熊本地震との違いを感じており、能登の復興は「熊本よりもはるかにかかるだろう」と支援継続を訴える。