高齢化が進む中、住民の心身の健康に寄り添い、不安の早期解消につなげるコミュニティナース(コミナス)の活動が、地域に浸透し始めている。白老町では、町石山出身で札幌市在住の看護師、須貝夢乃さん(27)が3年ほど前から、祖父母が暮らす町虎杖浜のアヨロ温泉でボランティアの健康相談を実施。27日には、町内の養成講座を修了した中野優さん(26)=登別市=も初めて参加し、相談に乗ったり、アロマオイルを使ったハンドトリートメントを施したりした。
コミナスは、カフェや温泉施設など人が集まる場に出向き、住民の相談に応じて健康維持を支援する医療人材。医療サービスの低下が心配される地方の自治体で、看護師の有資格者などが役割を担っている。
この日は、利用者に健康情報を盛り込んだ手書きのチラシを渡し、入浴後は水分補給が欠かせないことや血圧計の正しい測り方などを伝えた。子どもからお年寄りまで顔なじみも増え、須貝さんは「皆さんの喜ぶ姿や笑顔がやりがい」と語る。
利用した町虎杖浜の70代女性は「気さくにアドバイスしてもらえるのがうれしい」と話す。同温泉の坂元秀樹店長(52)は「看護師がいると安心感があり、自信を持って『ぜひ温泉に来て』と言える」と活動を見守る。中野さんは「コミナスは身近な人の気持ちに寄り添える存在。『話ができて楽しかった』と言ってもらえたらうれしい」と意気込みを語る。
須貝さんは2017年から、苫小牧市在住の看護師、川田幸香さん(39)と共に「町のよりそいナースらっこ」のグループ名で活動。白老町のNPO法人ウテカンパ(田村直美代表)にも参画し、同法人が定期的に開く健康相談カフェや介護予防サロンで住民との触れ合いを深めている。同法人はさらに、コミナスの担い手育成会社の協力を得て昨年10~12月、町内で養成講座を実施。道内では初の開催で6人が受講し、中野さんらが修了した。
須貝さんは将来、活動を事業化したい考えで、「福祉や介護サービスを必要とする住民を、迅速に町や社会福祉協議会につなげる仕組みも必要」と話している。