豊田自動織機は29日、フォークリフト用エンジン3機種の認証試験で不正を行っていた問題で、外部有識者による特別調査委員会の報告書を発表した。グループを率いるトヨタ自動車のスポーツ用多目的車(SUV)「ランドクルーザー」、ワゴン車「ハイエース」など10車種の自動車用エンジン3機種の出力試験で新たに不正が判明。トヨタは同日、10車種の出荷を一時停止すると発表した。
エンジン出力の基準は満たしており、該当車両の使用を直ちに停止する必要はないと説明している。トヨタの佐藤恒治社長は29日夜、東京都内で「お客さまに多大なご心配と不安を与え、心よりおわびしたい」と記者団に述べた。出荷停止対象は国内外で月間約3万6000台という。
国土交通省は不正を受け、30日に豊田自動織機の立ち入り検査を行い、事実関係を確認する。
トヨタ向けの自動車用エンジンでは、試験の際に燃料噴射量を調整し、出力などのデータを水増ししていた。産業車両用エンジンでは、フォークリフト用6機種、建設機械用1機種でも違反行為が追加で判明。排ガス試験の際に実測値とは異なるデータを用いたり、量産品とは異なる制御ソフトを使用したりしていた。
豊田自動織機の伊藤浩一社長は29日、都内で記者会見し「多大な迷惑をおかけし、誠に申し訳ない」と陳謝し、再発防止に取り組む意向を強調した。試験で違反行為があったエンジンや搭載フォークリフトなどの出荷は見合わせる。基準に適合しないエンジンを搭載した建設機械については、建機メーカーと連携してリコール(回収・無償修理)を検討する。
特別調査委の井上宏弁護士は同日の会見で不正の原因について、自動車用では発注元であるトヨタとの意思疎通の不足、フォークリフト用では厳し過ぎる開発日程などを挙げた。不正は遅くとも2007年ごろに始まり、「測定データを大切に扱わない感覚が受け継がれてしまった」結果、長期にわたって是正されなかったと分析した。
豊田自動織機は23年3月、フォークリフト用エンジンの排ガス性能試験で不正があったと発表。調査委員会を設置し、全容解明を委ねていた。