米紙ニューヨーク・タイムズが選ぶ「2024年に行くべき52カ所」の3番手に山口市が選ばれ、地元は喜びに沸くと同時に、今後増える観光客への対応に追われている。名所の国宝・瑠璃光寺五重塔は折しも改修中でシートに覆われており、山口県は一部を透明パネルに交換すると表明。しかし課題は他にも山積し、同市は大慌てだ。
同紙は山口市について「コンパクト」で「体験の詰め合わせ」のような街と評価。小道を歩けば、洞春寺境内の陶芸や昔ながらの喫茶店、おでんや鍋料理の店に出会え、近くには温泉があると説明。瑠璃光寺五重塔も「見事だ」と絶賛した。
この記事に伊藤和貴市長は「私の日常生活がそのまま書いてある。地方都市の一つの良さが、着眼点として認めてもらえた」と話す。
一方、2022年に市を訪れた外国人観光客は9000人。同紙は「観光公害が少ない」と評価するが、受け入れ体制は十分とは言いがたい。観光案内所の通訳は1人しかおらず、玄関口のJR山口駅には売店もコインロッカーもない。五重塔も25年まではシートに覆われたままだ。
慌てた地元は対策を次々発表。県は「がっかりしないように」(村岡嗣政知事)と、五重塔を覆う高さ約24メートルのシートのうち、東側2カ所を透明のアクリルパネルに交換する方針を発表。内部にカメラを入れ、改修作業が見られるモニターも設置する。
加えて、市は同時通訳機器を配備し、観光巡回タクシーを1日10便ほど走らせることも決定。コインロッカーもJR側が設置する見通しだ。
しかし、さらに観光客が来ることも見据え、市は来年度予算案に急きょ新規事業を検討することに。担当者は「市やホテルへの問い合わせも増えており、一丸となって頑張るしかない」と話している。