記憶

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2024年1月25日
記憶

  四十数年前、稚内市の幼稚園の運動会で父が撮影した1枚の写真。体操着姿で全力疾走する園児の背後に観覧席から、カメラ目線でほほ笑む1人の男性が写り込んでいる。黒いサングラスにオールバック。園児の目にはどう見てもタレントのタモリ(以下、著名人の敬称略)だった。「なぜ稚内に?」と若干の疑問を抱きつつ、小学校に上がるぐらいまで友人、知人に「タモリが見に来た」と自慢していた。今見ると全く似ていない。

   ドッペルゲンガーのごとく、自分とそっくりな人間に遭遇したことはないが15年ほど前、恵庭市の花火大会の会場で女子高校生グループに「○○先生も来てたの?」と声を掛けられたことがある。もちろん先生ではなく、人違い。至近距離で別人だと告げるも納得してもらえない。不審がる連れと首を傾げながら去っていく女子高校生たちの姿は今も忘れられない。人の記憶などあいまいなものだ。

   かくいう自分も人の顔を覚えるのは大の苦手。かつてはアーノルド坊やとエマニエル坊や、三谷幸喜と秋元康を見分けられず最近もジャン・レノとジローラモを間違えた。記憶力については、関心度合いも影響しているとされる。今からでも関心の幅を広げたい。あさって27日はイタリアで「記憶の日」らしい。(輝)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。