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  • 2024年1月24日
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  文化というほど大げさなものではないが生活には習慣がある。数日前のテレビで元日の能登半島地震の時に「何をしていたか」を被災者が話していた。時間は午後4時10分ごろのことだ。「家族らと正月料理を食べ始めていた」そうだ。

   北海道なら、前日の年取りの晩に夜遅くまで煮染めなどの正月料理を食べて、仕上げに年越しそばを腹に詰め込む。わが家は胆振東部の山育ちと道南の浜生まれの組み合わせだが、習慣はほぼ同じだった。息子が千葉県出身の明るく元気なお嫁さんと暮らすようになった年の大みそか、初めて異論を聞いた。お嫁さんは次々と食卓に運ばれる料理を見て「あしたは何を食べるのだろう」。千葉の大みそかは、年越しそばが食卓に加わる程度で、宴会は元日の夜からとばかり思っていたから、びっくりしたのだそうだ。

   地震の被害の最も大きかった石川県は当然ながら本州の文化圏。北海道とは別の元日という時間を過ごしていたのかもしれない。新しい1年を迎えた家族のうたげを揺れと津波、山崩れが襲った。

   大地震から3週間が過ぎた。停電や断水が続き、トイレも風呂もゆっくり使えない3週間。家具や建材につぶされた命を思い続ける被災地一帯を、また白い雪が襲う。今冬最強の寒波だという。(水)

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