「襟裳岬」や「落陽」などの名曲を書いた放浪の詩人、岡本おさみさん(故人)が作詞した歌に「アジアの片隅で」がある。こんな詞だ。〈ひと晩たてば 政治家の首がすげかわり 子分共は慌てふためくだろう 闇で動いた金を 新聞は書きたてるだろう〉。時代は1980年代。吉田拓郎さんが曲をつけ、彼の全国ツアーのライブ会場で観客と一体となって大合唱が起きていたことを思い出す。やがてリクルート事件が発覚。自民党が戦後初めて下野し、非自民の細川連立政権が誕生。政治改革へつながっていった。
あれから30年以上の歳月が流れた。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件の捜査が事実上終結。3人の議員と会計責任者らは罪に問われたが、安倍派(清和会)幹部の立件は見送られた。
月刊「文芸春秋」で保阪正康さんは「保守政治が蹂躙(じゅうりん)されている」と喝破。元衆院議員の田中秀征さんは「劣化した日本の政治が生まれ変わる最大のチャンス」とテレビで語った。宏池会、清和会、志師会の3派閥は解散表明。ただ、問題はあの裏金が何に使われたのかという点だ。当事者は何も語らない。リクルート事件当時と異なり、若手議員たちも沈黙が続く。劣化する日本の国会議員。政治改革の道は険しい。(広)