白老町虎杖浜の吉原和香奈さん(37)が、同地区の民宿、旧玉の井を譲り受け、「たらこ湯」として4月の改装オープンを目指している。改装用部材や水道修繕に充てる資金の目標額150万円が22日までにクラウドファンディング(CF)で集まり、「ペットと泊まれる温泉付きゲストハウスにしたい」と意欲を表している。
吉原さんは長野県出身、2008年東京農業大学卒業。聴覚にハンディキャップを持ちながら、えりも町役場などに勤務していた。温泉好きが高じ、旅先の白老町で民宿が取り壊されると聞き、「私がやりたい」とおかみに交渉。22年1月ごろ、破格の値段で譲り受けた。
犬のモモと猫のコタを飼うことから、ペットと泊まれる施設の少なさを日ごろから感じていた。選択肢は受け入れ可能なホテルで高額を支払うか、車中泊しかなく、旅行はもちろん、冠婚葬祭で遠出する際の宿泊先探しでも一苦労。「同じ悩みを持つ人の力になりたい」と、民宿をペットと泊まれる温泉付き宿泊施設にすることにした。
施設は8部屋中6部屋をゲストハウスとして提供し、男性、女性用の内風呂を設ける。将来は敷地内にドッグランも併設する考えだ。健聴者の友人と3人で運営し、手話での対応も可能にする。
開業に向けて23年4月に白老町民となり、同年11月から虎杖浜のアヨロ温泉でアルバイト修業をしながら準備を進めている。
CFは、寄付者に日帰り入浴券などの特典を付けて17日に始め、22日午前11時時点で121人から166万円が集まった。2月6日まで設定期間があることから、目標額を100万上げて計250万円とし、当初は諦めていたという乾燥機とまきストーブの購入資金に充てる予定。
吉原さんは温かい支援に感謝し「皆さんの応援を受け止めて頑張ります」と前を向く。施設について「JR虎杖浜駅に近く、透明度が国内2番目に高い倶多楽湖や登別、アヨロ海岸などの観光にも近い」とPRし「どんな人も安心して楽しく過ごせるボーダーレスな場にしたい」と力を込める。今後は元左官の父親や友人知人らと風呂場のタイル貼りや内装の補修作業を進め、オープンに備えるという。