転用

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  • 2024年1月20日
転用

  ドローンと呼ばれる無人飛行機が活躍している。ウクライナやパレスチナのガザなどの上空を攻撃や防衛の兵器として爆弾を満載し縦横に飛び交っている。

   民生用に開発された技術や機器を軍事用に転用することをスピンオンと言うそうだ。小川和也「人類滅亡 2つのシナリオ」(朝日新書)によると、大空に憧れ、動力飛行の実験を続けたライト兄弟の飛行機の技術は、10年とたたずに戦闘機として利用されたとか。農作物の収量を増やすため、空気中の窒素化合物を原料にアンモニアを精製する技術は火薬製造に転用された。ドローンや戦車、携帯電話の端末が転用例だ。逆の転用ではコンピューターや電子レンジ、全地球測位システムなどがあるという。広島と長崎に投下された原子爆弾の製造技術は後に発電に利用されたが、危機管理上の課題の大きさは東日本大震災で証明済み。

   「人類滅亡―」ではAI(人工知能)や遺伝子操作など巨大な可能性を持った新しい知識や技術の運用には、倫理や法の厳重な管理が必要だと説いている。しかし、関係国に、倫理を持つ政治家の顔を幾つ思い浮かべることができるか。法に基づく帳簿管理もできず、能登半島地震を横目に派閥の存廃に右往左往する政治家の多い国の国民は、考え込む。(水)

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