多数の家屋が倒壊するなどした石川県珠洲市で、東日本大震災の経験者やウクライナ人らの有志が被災地入りし、家屋の応急修理に汗を流した。ボランティアの本格的な受け入れのめどは立たず、復旧が目に見える形で進まない中、被災者からは「家を直したくなった」との声が聞かれた。
避難所となっている市立飯田小学校の掲示板に「建物の点検補修します」との手書きの紙が貼られていた。スタッフを通じて依頼を募った茨城県龍ケ崎市の工務店役員、北沢修さん(56)は「東日本大震災で建築仲間に助けてもらい、恩返しのために来た」と語る。ワンボックスカーなど2台に工具を詰め込み、ボランティア活動で知り合った仲間4人と13日に珠洲市に入った。
4年前にウクライナから来日し東京都内のIT企業に勤めるイホル・イホナティエフさん(26)も「手伝えるなら応援したいと思った」と志願。母国はロシアによる侵攻で大勢の人が家を追われた。日本の支援に感謝し、「家が無い状態はウクライナも同じ。気持ちが分かる」と話し、土のう運びなどを手伝った。
北沢さんらは4日間で、依頼を受けた約20戸で鍵を直したり、瓦屋根に土のうを置いて雨漏りを防いだりする応急修理を施した。外れたガラス戸を直してもらい、ブルーシートで覆ってもらった女性(83)は「寒さが直接入らなくなった」と喜ぶ。柱はしっかりしていると聞き、「ここに住みたい。家を直したくなった」と笑顔を見せた。
神奈川県綾瀬市の元自衛官、高橋一さん(69)は「居ても立ってもいられなかった」と、泊まる場所を確保した上で訪れ一緒に活動した。ボランティア活動について「迷惑にならないようにテント泊が多い。冬本番の寒さや道路が復旧していない状況での受け入れは当分難しいだろう」と心配した。