水と暮らし 企画展昔の道具 【上】 重労働解消した電気洗濯機

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2024年1月19日
水と暮らし 企画展昔の道具
【上】 重労働解消した電気洗濯機

  苫小牧市美術博物館は28日まで、企画展「昔の道具~水と暮らし~」を開催している。電気洗濯機や五右衛門風呂など昭和時代を支えた94点を展示。同館の歴史担当の佐藤麻莉学芸員が2回にわたって解説する。

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   昭和初期、洗濯は家事の中でも重労働であった。5人家族の洗濯物は、年間で約750キログラムになるといわれ、毎日バケツ2杯ほどの洗濯物を洗濯たらいと洗濯板を使って手作業で何時間もかけて洗った。

   この状況を変えたのが、電気洗濯機である。一槽式洗濯機(写真参照)は洗濯槽の中に回転翼があり、中に水と洗剤、衣類を入れてかき混ぜて汚れを落とす。洗い終わった後、洗濯機に付属したローラーに洗濯物を挟み込むように入れてハンドルを回すと洗濯物が絞られて、洗濯機の側面に付けられた籠の中に出てくる。

   電気洗濯機が家庭に普及し始めた昭和30年代は、高度経済成長を背景に電化製品が次々と発売された。特に「三種の神器」の白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫は時代を象徴するもので、1957(昭和32)年における普及率はそれぞれ7・8%(テレビ)、20・2%(洗濯機)、2・8%(冷蔵庫)であった。洗濯機の普及率が他の製品より高いのは、手洗いの仕事から解放されたいという人々の願いが読み取れる。

   生活の根本に関わる道具の電化は従来、人が時間と手間をかけて行っていた作業をスイッチ一つで完結させ、快適な生活を生み出した。さらに、家の構造や女性の役割など、社会全体の変化にも多大な影響を与えた。誰しもが使ったことがある電気洗濯機は、電化製品に囲まれた現代生活の原点を振り返るのには欠かせない、大事な歴史資料の一つになりつつある。

   (苫小牧市美術博物館学芸員 佐藤麻莉)

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   午前9時半~午後5時(最終入場は同4時半)。観覧料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。月曜休館。

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