(3) 挑戦を後押ししたい ネイリスト兼レンタルスペース店主 今泉(いまいずみ) 百恵(ももえ)さん(39) イベント出店機に独立

  • 特集, 自分らしく~仕事を興した女性たち
  • 2024年1月18日
(3) 挑戦を後押ししたい ネイリスト兼レンタルスペース店主 今泉(いまいずみ) 百恵(ももえ)さん(39)
イベント出店機に独立

  子育てに追われ、社会とのつながりが希薄になっていく毎日。だんだん自分自身と向き合える時間が少なくなり、何が楽しいのかも分からなくなってきた時、知人からハンドメード作家やハンドマッサージ師、ネイリストが出店するイベントに出てみないかと声を掛けられ、起業の道が開けた。「自分が助けてもらったように人と人とをつなぎ、少しでも挑戦を後押しする力になれたら」と夢を語る。

   苫小牧市出身で苫小牧工業高校を卒業し、室蘭の金融機関に就職。19歳で結婚した。その後、退職し21歳で長女を出産。市内食品製造会社でパート従業員として働きながら3人の娘を育て35歳で離婚した。現在小6、中3、高2の母として家庭を支えつつネイリスト、レンタルスペース店主、カフェ経営者の顔を持つ。

   ネイリストの勉強を始めたのは27歳の時。2人の子どもの面倒を見ながら3人目の出産へ産休に入ったタイミングだった。その頃は1日の大半が子育てに費やされ、世の中から取り残されたような感覚に陥り、「社会とのつながりを持ちたい」と一念発起した。

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   自身の結婚式で初めて施術してもらったネイルの感動が忘れられず、市内の専門スクールに通いネイリスト技能検定3級とジェルネイル技能検定初級を取得。2013年、母親が経営する美容室の一角を借り、ネイルサロンを始めた。

   結婚式で塗ってもらったネイルは、比較的シンプルなピンク色のラメグラデーション。それまで手が大きいことがコンプレックスだったが「爪の色を変えただけで、こんなにきれいに見えるのかと驚いた」と振り返る。「顔や髪の毛と違い手は視界に入るので、目にすると気分が上がる」とネイルの魅力を語る。

   独立を―と本格的に動きだしたのは離婚後の36歳の冬。知人のつてでイベントに出たことがきっかけだった。それまでは夫や子どもたちのために―と家庭中心の生活でネイルは副業にとどまっていたが、参加を自分自身で決断、実行できたことで「道が開けた」と言う。

   この経験を機にできることはすべてやってみようと、22年4月、有珠の沢町で自宅兼店舗とする建物を借りて独立開業。同年7月からは、店の空きスペースを作品展やイベント会場などとして貸し出すレンタルスペース事業も始めた。レンタルスペースでは平日朝(午前6時半~9時)にカフェ営業。手作りのおかず3~4品とご飯、みそ汁にコーヒーも付けて400円で出す。20~70代の幅広い客層に「安くておいしい」「居場所をつくってくれてありがとう」と喜ばれており、金曜日の夜のみ(午後6時~10時)お通しとドリンクも提供している。

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   もともと思い立ったら即行動するタイプで、娘から「クレイジーな母」と呼ばれることも。午前4時に起床してから動きっ放し。カフェ営業では、客同士が活発に交流し「朝の会みたい」とほほ笑む。「(レンタルスペースで)一緒にコラボイベントをしよう」と語り合う姿もあり、「今後、ここでの活動をきっかけに自分の店を構えてもらえるとうれしい」と目を輝かせる。

   本当に好きでやっているのか―。自分の心と素直に向き合うことを心掛け、今ある幸せをかみしめながら生活する日々。「家庭の中にいると、新しいことを始めるのは怖いけど行動すれば何かが変わる」と信じている。「今後は事業を始める前の販売の練習、試験的な開業などもサポートしていきたい」。そう話す目に、強い意志がにじんでいた。(樋口葵)

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