能登半島地震で甚大な被害が出た石川県輪島市門前町の避難所で「恩返し」をしようと奮闘している女子高校生がいる。県立七尾高校2年の広沢聖菜さん(16)は、0歳だった2007年の地震で保育所に避難した。あの時と同じ保育所で炊き出しや物資運びに一生懸命取り組む姿は、「こっちも笑顔になる」と他の被災者を元気づけている。
07年3月、生後2週間だった聖菜さんは、門前町の自宅で最大震度6強の地震に見舞われた。母早苗さん(53)は聖菜さんを抱いて、最寄りの避難所だった松風台保育所に逃れ、約2週間の避難生活を送った。
早苗さんによると、当時避難所では、学生ボランティアらが毎日鍋で沸かしたお湯をバケツに張って聖菜さんを沐浴(もくよく)させ、体重も記録して健康を気遣ってくれた。聖菜さんは「いつも母から『あそこの保育所に助けてもらってんよ』と聞いて育った」と話す。
あれから17年、聖菜さんの町は再び大地震に襲われた。「テレビや棚がばたばた倒れ、すぐに津波警報が出て、みんなで走って高台に逃げた」。家族で身を寄せた避難所は、かつて自分を助けてくれた松風台保育所だった。
「みんなの役に立って、恩返ししたい」。大鍋で雑炊やみそ汁を作ったり、自衛隊員に交じって支援物資をバケツリレーしたり。5キロの米袋を四つ抱えて元気に運ぶ聖菜さんの姿に、大人たちは「避難所のアイドルですよ」と目を細める。
来年は受験生。手伝いの合間に、家から持ち出した単語帳や参考書で勉強しているといい、「将来の夢は決まっていないけど、どこにでも行けるように勉強しないと」とはにかむ。
「いま足りないものは」と尋ねると、「日持ちのする食材がほしい!」。支援物資のパンやおにぎりは賞味期限間際のものが多いといい、「(記事に)おにぎりの具はツナマヨより、雑炊にしやすいサケや梅干しの方がうれしいって書いてください」と笑った。