(2)女性と子どもに健康を 鍼灸師  中山(なかやま)いくみさん(45) 東洋医学の観点から

  • 特集, 自分らしく~仕事を興した女性たち
  • 2024年1月16日
「困り事を気軽に相談できる場所にしたい」と中山さん
「困り事を気軽に相談できる場所にしたい」と中山さん

  「悩み事を抱える母親や子どもらに、食やおきゅう、はり治療で少しでも楽になってもらいたい」

   昨年11月、苫小牧市花園町で「女性と子どものための鍼灸(しんきゅう)治療院NicoLani(ニコラニ)」を開院した。東洋医学の観点から、子育てに悩む母親らが健康に暮らしていけるようなケアをモットーにしている。

   苫小牧市出身。名寄市の栄養士養成学校を卒業後、富山県の小中学校で栄養士としての実務経験を積み、管理栄養士の資格を取った。

   東洋医学と出合ったのは20年ほど前、富山で参加した薬膳に関する研修会。患部だけでなく、心の状態も見ながら治療する東洋医学の考え方に興味を持ち「もっと深く学びたい」と独学を続ける中で鍼灸にたどり着いた。「栄養士の自分なら、食と鍼灸で体の内側、外側から健康にアプローチできる」と考え、栄養士の仕事を辞めて札幌の鍼灸師の養成学校で資格を取得。東京女子医科大学の東洋医学研究所で、鍼灸治療に従事するようになった。

   15年ほど前に結婚し、東京で暮らしていた11年に長女を出産。「子どもの夜泣きがすごく近所迷惑が心配で、夜中にずっと(子どもを乗せて)車を走らせている」など深刻な悩みを耳にするたび「ティースプーンで皮膚をさすったり、ドライヤーで体を温めたりといった鍼灸の手法を取り入れれば困り事に対応できるのに」と歯がゆく思い、市民の東洋医学に対する理解不足も感じたという。

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   夫の転勤で10年ほど前から苫小牧に住んでいるが、札幌や東京で開かれる鍼灸の講習会には今も積極的に参加。「管理栄養士と鍼灸師の資格を両方持っているのに生かさないのは、教わった先生方にも申し訳ない。社会に貢献したい」とあれこれ考えた末、女性や子どものケアについて専門的に学んできたことや自身の子育て経験などを生かせる女性や子どもに特化した鍼灸院の開院を決めた。

   昨年2月から、東洋医学的なセルフケアを学ぶ「お灸女子会」や「東洋医学ミニ講座」なども開催。市民に東洋医学を理解してもらう活動に力を入れている。

   子育て中の母親や子どもだけでなく、不妊治療を行っている女性なども歓迎しているが今は鍼灸師やお灸女子会会員の紹介客らが中心。今後は医療機関との連携も図っていきたい考えだ。体の不調や困り事を鍼灸師に相談してみるという考え方が社会にまだ浸透しておらず、あちこちの病院を回ってようやく鍼灸院にたどり着いたという人が多い。気軽に相談できる場所で在りたいと願う。

   「女性が元気じゃないと社会も元気にならない」。地域に親しまれる鍼灸院として定着し、東洋医学の力で女性と子どもが生き生きと暮らしていけるまちづくりの一端を担っていく決意だ。

  (陣内旭)

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