能登半島地震で多くの人が避難する中、避難所代わりに農業用のビニールハウスへ身を寄せた人たちがいる。知らない人が集まる避難所より安心できるという声がある一方、十分に暖が取れず眠れないと話す人も。防災の専門家は、余震での落下物がないなど利点がある半面、冷えなどへの対策が必要と指摘する。
地震で多数の家屋が倒壊した石川県輪島市稲屋町にあるビニールハウスでは、避難者約20人が寝泊まり。地面の上に段ボールや毛布を重ね、その上で女性たちが身を寄せ合い、パンや笹ずしを食べていた。干場昇一さん(76)は「ここにいる人たちはみんな近所で知り合い。(避難所より)精神的にも安心」と話す。
奥行き60メートルほどの広さのハウスをブルーシートで区切り、熱が逃げないよう工夫を凝らした。それでも、夜は寒さが厳しく、ダウンジャケットを着て毛布をかけても「眠れない日もあった」(干場さん)という。
同市長井町でも同様の光景が見られた。人が多過ぎて避難所に入れず、家を無くした被災者にとって、地震の揺れに耐えたビニールハウスが唯一の居場所となった。ハウスの持ち主の女性(67)は「子どもの家に行く人もいて最初より減ったが、行く場所がない人たちはここに残った」と語る。
日本防災士会京都府支部の森本隆副支部長によると、ビニールハウスへの避難は熊本地震の際にも見られたという。「多少は寒さがしのげて、余震が来ても落下物がない」と利点を挙げる一方で、「地面が冷たいという声はよく聞く。その際は、荷役台(パレット)などを敷いて一段床を上げると良い」と提唱した。