能登半島地震は、20歳の門出にも大きな影響を与えた。被災した石川県珠洲市の苗加さくらさん(20)は金沢市内で開かれた成人式と同窓会への参加を断念し、母親と選んだ晴れ姿の振り袖を着ることはかなわなかった。旧友との再会の約束も果たせず、「式は一生に一度なので振り袖を着たかった。参加できなくて本当に悲しい」と思いを語った。
中学まで出身地の金沢市で暮らした苗加さんは、母親の実家がある珠洲市の飯田町で約400年続く「燈籠山(とろやま)祭り」に幼い頃から魅了され、中学卒業後に同町の祖父母宅に引っ越した。苗加さんは、「珠洲市は人が温かく、ちょっと変わったことがあれば周囲が心配してくれる。自然にも囲まれ住みやすい」と話す。
地震発生時は、同市若山町の知人宅に滞在していた。海沿いに位置する自宅は、1階の居間や台所が津波に襲われ、車3台が流された。両親と高校生の妹ら家族5人は避難して無事だった。
金沢市の友人からは安否確認とともに、「二十歳の集い」の参加可否を尋ねる連絡が相次いだ。式や同窓会には参加できないと伝えると、友人からは「また遊ぼうね」と返信があった。苗加さんは「地震のたびに毎回連絡をくれる友人もいる。成人式はみんなで集まろうと言っていたのに」と落胆した。
知人宅で3日間を過ごし、4日に家族と合流して避難生活を続ける苗加さんは、「お風呂と眠る場所に困っているので、ライフラインが早く整ってほしい。私にできることは被災している人に声を掛けることくらいなので、精神的に自分が暗くならないようにしています」と話した。