『昔は「でんき」の勉強をしていましたが、今は「てんき」の仕事をやっています。こんにちは、森和也です』というのが講演をさせていただく際の、つかみによく使う決まり文句です。
今から20年前、北見工業大学の「電気電子工学科」に席を置いているときには、まさか将来の自分が「でんき」ではなく「てんき」の仕事をしているとは思ってもいませんでした。今年は気象キャスターとして10年目で、毎年のように「異常な」天気の解説をしていますが、毎年思うことではあるのですが、異常な天気がない一年であってほしいと思いながら2024年がスタートしました。
1月の異常な天気として思い出されるものというと、04年1月、大学1年生の地元の北見で経験した豪雪です。前線を伴った低気圧が急速に発達しながら北海道付近へ近づいた影響で、その年の1月13日から16日ごろは北日本を中心に暴風雪や大雪と大荒れの天気となりました。
この期間に観測された72時間降雪量は北見で124センチと、統計開始以来最も多くなりました。そこら中「雪の壁」となり、その年の1月16日に北見のアメダスで観測された171センチという最深積雪は、1979年から続く統計期間の中で最も多く、今も記録が破られていません。
生活のあらゆる面で影響が出て、いつもは車で30分くらいで着くような場所に1時間半はかかるような状況で、長年、北見に住んでいる人も、「こんな雪、経験したことがない」と言うほどの大雪でした。2004年の豪雪を大学の時に経験し、気象に興味を持って、気象予報士を目指すようになった…というわけではなく、資格を取得したのは社会人になってからです。
学生の間は特に将来やりたいこともなく、どちらかというと無気力な学生だったと思います。唯一、少しなりたいと思っていたことのある職業といえば「天文学者」で、1997年4月ごろ、上空に現れたヘール・ボップ彗星(すいせい)のまぶしい姿は、当時小学4年生の私の心をわしづかみにするには十分な輝きでした。北見にあるプラネタリウムに足しげく通い、夜空に浮かぶ星座の名前は一通り言えるくらいにまでハマっていましたが、「将来なりたい職業」を考える道徳か何かの授業で、その気持ちは放射冷却で地表が急激に冷えるかのごとく冷めてしまいます。(続く)
(気象予報士)
もり かずや 1985年、北見市留辺蘂町生まれ。大学卒業後、会社勤務の傍ら、2010年に気象予報士の資格を取得。日本気象協会北海道支社に転職。テレビ・ラジオなどで気象解説を担当。現在はNHK札幌放送局「おはよう北海道」に出演中で、STVラジオ、NHKラジオなどでも気象を担当している。