羽田空港(東京都大田区)で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、国土交通省は3日、管制の交信記録を公表した。管制官は日航機に着陸を許可する一方、海保機には滑走路手前の停止位置までの走行を指示したが、進入許可は出していなかった。海保機が滑走路に誤って進入したことが事故につながった可能性が明らかになった。
海保によると、海保機の機長は事故後、「許可を得た上で滑走路に進入した」と搬送先の病院で報告したといい、交信記録と食い違いが生じている。運輸安全委員会は海保機からボイスレコーダーなどを回収しており、滑走路に入った詳しい経緯などを調べる。
公表された記録は、音声記録を書き起こしたもので、日航機のパイロットは2日午後5時43分に管制官から滑走路への進入を継続するよう指示を受けると、同機は「進入を継続する」と復唱。約2分後に行われた最後のやりとりでは、管制官と同機が「着陸支障なし」と共に確認していた。
海保機との交信は、日航機とのやりとりが終わった後に開始。同45分11秒から同19秒までの間、誘導路にある滑走路手前の停止位置「C5」まで地上走行するよう指示があり、海保機は「C5に向かいます」と返答した。
その後、海保機との交信はなく、国交省は「海保機に滑走路への進入許可は出していない」との見解を示した。管制官の指示は「適切だったと考えている」としている。
運輸安全委は航空事故調査官6人を現場に派遣し調査を開始した。警視庁も3日、東京空港署に70人規模の捜査本部を設置し、現場検証を実施。業務上過失致死傷容疑で捜査に乗り出し、今後、関係者への聴取なども本格化させる。
事故は2日午後5時30分ごろ発生。日航機の乗客乗員全員が脱出し、うち15人が負傷した。海保機は搭乗していた6人のうち5人が死亡し、脱出した機長も全身やけどの重傷を負った。東京消防庁によると、日航機の火災は約8時間半後に消し止められた。