噴霧乾燥機の不正輸出容疑で逮捕され、後に起訴が取り消された機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らが、違法捜査で損害を受けたとして国と東京都に計約5億6000万円の賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。桃崎剛裁判長は、警視庁公安部や東京地検の捜査について「合理的な根拠が欠けている」として違法性を認定。国と都に計約1億6000万円の支払いを命じた。
原告は同社と大川原正明社長(74)、元役員島田順司さん(70)、勾留中に胃がんが判明して亡くなった元顧問相嶋静夫さん=当時(72)=の遺族ら。
判決によると、公安部は捜査を始めた当初、経済産業省と協議し、同社の噴霧乾燥機は輸出規制に該当すると判断していた。 桃崎裁判長は、一貫して規制対象ではないとした相嶋さんらの供述に基づいて捜査し直せば、規制に該当しないことは容易に分かったはずだと指摘。「嫌疑があるとした公安部の判断は合理的根拠が客観的に欠けている」として、逮捕の違法性を認めた。
東京地検の検察官についても、同社側の主張を把握した後にも起訴や勾留請求を行っており、「必要な捜査を尽くしておらず違法」とした。
島田さんを取り調べた警察官が規制の解釈を誤解させるような説明をしたり、調書を修正したように装ったりした行為を違法な取り調べと判断した。
6月の証人尋問では、捜査に当たった同庁の現職警察官が、事件について「捏造(ねつぞう)ですね」と証言。別の警察官は追加捜査を進言した際、上司から「事件をつぶして責任を取れるのか」と言われたと証言したが、上司は否定していた。判決はこれらの点には言及しなかった。
新河隆志・東京地検次席検事の話 主張が一部認められなかったことは誠に遺憾で、上級庁などと協議して適切に対応したい。
小松秀樹・警視庁訟務課長の話 判決内容を精査した上で今後の対応を検討する。