苫小牧港は4月25日、開港から60周年を迎えた。世界初の内陸掘り込み式港湾として造られ、1963年の同日に第1船が入港。以来、北日本の中心的な港として、道内の物流や経済を支える国際貿易港として発展してきた。「還暦」を迎えた今なお成長を続け、世界的な流れでもある脱炭素化にも力を入れる。港湾関係者は「市民に親しまれる港湾」を目標に、新たな動きをスタートさせている。
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苫小牧港管理組合は今年、60周年記念事業を幅広く展開した。物流港として順調に港勢を拡大してきたが、同組合も「市民にとっていまひとつなじみが薄い」と感じる中、地域とのつながりを深める機会にした。
その一つがモニュメント「ポート・オブ・トマコマイ」の新設。西港北埠頭(ふとう)キラキラ公園に「SNS映え」を意識した、気軽に立ち寄れるスポットを誕生させた。苫小牧のアルファベット表記をかたどった長さ約12メートル、高さ約2・9メートルのシンボルだ。
8月18日の除幕式は、プロ野球北海道日本ハムファイターズのファイターズガールをゲストに招くなど華やかに行い、市民約300人が訪れた。
新たな観光スポットとして人気は上々で、テレビなどの取材依頼も相次いだ。SNSを通して道外での認知度向上にもつながっているという。
苫小牧港が今後も発展し続けるためには、次世代を担う子どもなどへのPRは不可欠で、同組合政策推進課の伊藤充課長は「港の周知につながる活動は積極的に行いたい」と展望する。
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港湾の脱炭素化に向けた動きも進んだ。同組合や港湾関連企業などは8月、改正港湾法に基づき苫小牧港港湾脱炭素化推進協議会を発足。港湾地域全体の二酸化炭素(CO2)排出量を2050年度にはゼロにするため、13年度の268・4万トンを基準に、30年度までに48%削減(128・8万トン減)する方針だ。
協議会は二つのワーキンググループも開設。燃焼時にCO2を排出しない水素や、燃料アンモニアなどの次世代燃料の供給拠点化に向けて議論を展開。海藻や植物性プランクトンにCO2を吸収させる「ブルーカーボン生態系」の活用も模索する。
港湾地域では脱炭素の具体的な取り組みも目に付くようになった。大北運輸(市晴海町)や苫小牧栗林運輸(市元中野町)は、バイオディーゼル燃料を使ったトラックの運行を始めた。今月6日には同組合と蓄電池事業を展開するパワーエックス(東京)が、港湾の脱炭素化へ包括連携協定を締結。インフラ整備も加速していきそうだ。
(中田大貴)