10 共創の芽生え 芸術祭に見た保存と継承

  • 特集, 記者ノートから2023
  • 2023年12月26日
10 共創の芽生え 芸術祭に見た保存と継承

  白老町内各地で展開される芸術祭「ルーツ&アーツしらおい―白老文化芸術共創」は今年、3年目の取り組みを終えた。驚かされたのはアート展示の一部が町民有志の手で保存、継承されていくのを目の当たりにしたからだ。同祭が掲げる「共創」の芽生えを見る思いがした特別な年だった。

   芸術祭は、日本の美や文化を世界に発信する「日本博2・0」の一環で文化庁や日本芸術振興会、町民有志でつくる白老文化観光推進実行委員会(熊谷威二会長)が主催している。今年は9月1日から10月9日まで町内の12カ所で展開。会期中の来場者は前年比1・6倍の延べ約7900人に上った。

   地元の町民が継承した取り組みの一つが旧竹浦小学校の校庭を舞台に夜間、数百の電球で照らすインスタレーション展示。作品は同地区に家族で定住して7年ほどになる、アーティストでデザイナーの石川大峰さん(43)の手による。住民が秋の風物詩となることを願って石川さんと「竹浦アートプロムナード(TAP)」を企画し、9月15日から30日まで実施。29日には夜市と題して飲食や雑貨ブースが出店し、縁日のようににぎわった。

   虎杖浜、社台の両地区で展開されている屋外写真展を地域住民で保全する動きも今年加速した。11月に有志4人による白老屋外写真保存会が発足し、両地区の計34カ所44点の作品群を特殊なコーティング材で劣化から守る作業を年2回ほど行っていくという。

   保存会の活動はまだこれからだが、双方の関係者から「みんなで手分けして楽しく取り組みたい」という気風を感じる。まちのルーツに笑顔があふれるとき、こうした瞬間を記録できることは白老で暮らす記者の至上の喜びだ。

  (半澤孝平)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。