苫小牧初のFMコミュニティーラジオ局「FMとまこまい」が9月1日、開局した。子どもから大人まで、さまざまな立場や年代の市民が発信者となり、地域の情報や話題を提供する場をつくろうと、市民有志がFMとまこまい実行委員会を発足させてから約4年間の準備期間を経て、実現した。
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開局のきっかけは2019年8月、苫小牧青年会議所(JC)が行ったパネルディスカッション。「苫小牧にコミュニティーFMラジオ局は必要か」のテーマで、生活の質の向上やまちづくり、災害時の情報発信などの点から、ラジオ局の有用性を認識した。JC関係者や市民有志らが同年末、実行委を立ち上げた。
市民パーソナリティーの養成をはじめ、インターネットサイトを使ったテスト番組の公開、微弱電波を使って公開生放送する「ミニFM」など、番組制作のノウハウを蓄積。21年11月にはラジオ局の運営会社として、とまこまいコミュニティ放送を設立した。
今年に入り、開局に向けた動きが加速した。3月末に北海道総合通信局から予備免許を取得し、市役所庁舎屋上に送信アンテナを設置。8月上旬には送信する電波が規格を満たしているかを確認する試験電波発射を実施し、同28日付で総務省が無線局の免許を交付。9月1日正午、放送をスタートした。
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FMとまこまい局長も務める運営会社の二瓶竜紀社長(47)は、かつて建設会社に勤務した。災害復旧の仕事にも関わり、18年9月の胆振東部地震では、厚真町が設けた臨時災害放送局を通して、炊き出しや道路状況、上下水道の復旧などきめ細かな情報を逐一発信するラジオの強みを目の当たりにした。
二瓶社長は「万が一の際は市民の命と暮らしを守る役割を担っている」とラジオが果たす責任の重さを認識。記念すべき最初の放送では決意も込め、約5時間の開局特別番組で市危機管理室の担当者らを招き、災害への備えの大切さを伝えるコーナーに力を入れた。
加えて開局直後の9月4日、災害時に緊急情報を放送する応援協定を市と締結。停電時にも放送を続けられるように、蓄電器などの準備も進めた。10月には新冠町で開かれた北海道防災総合訓練に二瓶社長が参加し、臨時災害放送局の開設や運営手順を学ぶなど備えを確認した。
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同局は現在、平日の朝、昼、夕に最新のニュースを流す生番組と、市民パーソナリティーが手掛けた収録番組を放送している。番組編成の見直しは数カ月置きに行っており、来年1月の次クールではオリジナル番組が7本ほど増えて約30本となる予定。二瓶社長は「市民パーソナリティーの番組制作技術もどんどん向上している。オリジナル番組を増やし、良質な放送を展開していきたい」と意気込む。
(姉歯百合子)