悪口か否かの線引きは難しい。「きもい」は悪口だとして「天然(ぼけ)」はどうか。「増税メガネ」も微妙だ。言われ方や頻度などでそのダメージは変わる。
ジャニーズ性加害問題当事者の会の代表は9月、SNSでの「死ね」「消えろ」といった誹謗(ひぼう)中傷が「少なくとも数万件に上る」と述べた。そのストレスは想像を絶する。「死ね」は人格否定の暴言で直接、間接的に影響しうつ病など精神疾患にかかったり、自ら命を絶ったりする人もいる。自殺者には著名人も多い。某企業のネット上の誹謗中傷に関する意識調査では、悪質なコメントを書かれた経験のある人は11%で、書き込んだことがあるとした人も6%いた。昨年、侮辱罪を厳罰化する改正刑法が施行され、投稿削除の基準や手続きなどSNS事業者の対応も議論されている。
「くそ食らえ」や「犬畜生」といった旧来の罵詈(ばり)雑言をあまり聞かなくなった代わりに、「キモオタ」「○○厨」といったネットスラングをよく目にするようになった。怒られたり、批判されたりすることへの免疫低下も深刻で俗語を誹謗中傷の隠れみのにしてはならない。言葉を選び過ぎると自由に物を言えなくなり窮屈だが、SNSを含む公の場での発言には気を使いたい。 (輝)