朝晩の冷え込む季節、石油ストーブは寒い部屋を速やかに暖めてくれる。ただし火災事故のリスクには注意が必要だ。高齢者は特に事故が多く、気を付けた方がよいという。
高齢者による事故が多い理由について、製品評価技術基盤機構(NITE、東京都渋谷区)は身体機能や判断力の低下、長年の使用経験による油断を挙げ、「正しい使用方法を改めて確認してください」と呼び掛ける。
2022年度までの5年間に、NITEに報告された石油ストーブと石油ファンヒーターによる事故は269件。被害者の年代が判明した206件のうち、70歳以上の高齢者の事故は131件と半数を超えた。死亡事故は47件で、70歳以上は31件を占めた。
京都府では22年4月、70代の女性が石油ストーブを使用中、建物を全焼する火災が起きた。給油する際、タンクの給油口のふたをしっかり閉めていなかったため、ストーブに戻す時にふたが外れて灯油がストーブに掛かり、火が付いたとみられるという。
ガソリンを誤って給油したり、石油ファンヒーターの近くにあったこたつ布団が燃えたりして、建物が全焼した事故も報告されている。NITEは「加齢による握力低下でふたを閉める力が弱まることや、ガソリンの臭いが分かりづらくなることなどが背景にある」と分析する。
こうした事故を防ぐため、石油機器メーカーなどでつくる日本ガス石油機器工業会(千代田区)は「給油の際はまずストーブを消しましょう。給油後はタンクのふたがきちんと閉まっているかを確認。タンクを下向きにし、灯油が漏れないかも見てください」と求める。
11年以降は、ふたが閉まっているか確認する仕組みがあるなどの安全基準を満たす「PSCマーク」が付いた製品でなければ販売できなくなった。マークが付く前の製品を使っている場合、「買い替えも検討するとよいです」。
また、ガソリンは専用容器に入れてラベルを貼り、灯油とは別の場所に置く。ストーブは壁や天井、家具から離れた所に設置。カーテンや布団などが動いてストーブに近づく恐れがあることにも注意する。
NITEは高齢者の家族らに対し、「ストーブが燃える物から離してあるかを見る、ふたの閉まりを調べる方法を一緒に確認するなど、サポートも大切です」と呼び掛けている。