道東のシシャモ漁も終わった。今年は鵡川漁協などが資源回復のための休漁を決めた。その後の釧路や十勝でも漁獲量が減り道の集計では全道の漁獲量は112・6トン。前年に比べ42%の減少だ。
更科源蔵さんが各地で採録したアイヌの民話や伝説にはヒグマやエゾシカをはじめとして魚や鳥、昆虫など北の大地と海や川、空に生きるたくさんの生き物が登場する。生き物の多さや知恵、ときには悪知恵にも大いに感心させられる。
シシャモの伝説もいくつかある。「川の縁にヤナギの木が生えたススランベツという川のある天上の島から葉が落ち、腐るのがかわいそう―と、神様が葉に命を与えシュシュハム(ヤナギの葉)という魚にした」あたりが原型と思われる。神様は、シシャモの漁獲量も見守っていた。「天上の雷神の妹が沙流川の上流から川下のあたりを見ていると、集落から炊事の煙がのぼっていない。人間たちが食物がなく困っているー」。そんな不漁の伝説は10月上旬の当欄で紹介した。
道の統計によるとシシャモの漁獲量は1990年以降、千~2千トン台で推移していたが、2008年には千トンの大台を割り込み、21年には200トン以下になっていた。原因は不明。「来年こそ」。そう願いながら先人の知恵を探る。(水)