港や磯の釣りで”招かれざる客”扱いされがちなのがドンコ。虫餌も魚の身餌も食べるから、カレイやアナゴ、根魚を狙っても反応してくる。見た目の印象でうとまれがちだが実は美味で旬は今時期。三陸地方では冬の郷土料理の主役だ。
ドンコは地方名で和名はエゾイソアイナメ。アイナメと言いながら、分類上はタラ目。下あごにひげがあるのを見ればうなずける。本家のアイナメ(地方名アブラコ)はカサゴ目。日高で釣れるエゾクサウオも釣り人の間では「ドンコ」。こちらは腹に吸盤がある。
エゾイソアイナメのドンコは夜、活発に食餌行動を取る。アナゴ釣りでは高い確率で掛かる。10月の大潮の夜、近郊の港でアナゴを狙って夜を明かした20代の男性は「夜はドンコ祭りだった」と苦笑い。本命を阻む猛攻に閉口したという。日中でも根周りを攻めれば釣れる。投げ釣りなら仕掛けも餌もカレイ、アブラコと同じ。体長は大きくても30センチ程度だ。
実は釣り倶楽部担当は以前、食わず嫌いでドンコをずっと「外道」扱いしていた。3年前、苫小牧市内の飲食店で煮付けを食べる機会があり、うまさに舌を巻いた。”目からうろこ”。今ではキープする。
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釣り倶楽部の読者なら「食べるまでが釣り」の言葉を聞いたことがあるはず。アナゴの夜釣りの際に足元で狙って釣った4匹を使ってみぞれ鍋を試した。
魚料理のポイントは下ごしらえ。ぬめりとうろこをしっかり取る。身の切り方はインターネットを検索して参考にした。鍋の汁はだしのみ。野菜と豆腐、魚、とりごぼう、たっぷりの大根おろしが絶妙な味わいを構成する。小鉢に盛ったら、少量のめんつゆをお好みで掛けて召し上がれ。
軟らかくて癖のない白身はタラの若魚のよう。ひれの細かい骨がびっしりあるが、魚が小さいのでよくかめばさほど気にならない。今が旬の肝はうま味が凝縮されていて濃厚。肝はアンコウにも引けを取らない―と、東北で言うのもうなずける。釣り倶楽部は胸を張ってドンコを秋冬の本命魚に推薦する。ごちそうさまでした―。