2 ひき逃げ事件から46年 記事手掛かりに現場へ

  • 特集, 記者ノートから2023
  • 2023年12月12日
2 ひき逃げ事件から46年 記事手掛かりに現場へ

  46年前に厚真町で起きたひき逃げ事件を取材することになった。当時、宮城県から出稼ぎに来ていた40代男性が車にはねられ、亡くなった事件。父を失った娘=同県在住=が父の最期となった場所で手を合わせたい―と自身の還暦を機に初めて現地に行こうと決意し情報を探す中、関係者から記者の元に相談があった。

   苫小牧民報のバックナンバーを調べ、該当の事件を報じた1977年9月の記事を発見。記事の内容を仲介者に伝え、遺族に取材を打診した。後日、女性から連絡があり、厚真に足を運ぶ際に会えることになり、その一部始終が11月8日付紙面に掲載された。

   取材過程で第1発見者の男性にたどり着き、女性と電話で話す場面にも立ち会った。46年前の出来事ながら男性は発見時の状況を丁寧に説明してくれ、女性が中学生時代に家族から聞いただけでおぼろげだった記憶は、確かなものになった様子だった。女性は時折、言葉を詰まらせながら何度も感謝の言葉を口にした。

   日を改め、男性は記者の電話取材に応じたがその際、「自分にとっても忘れられない記憶だった」と打ち明けた。

   発見時、男性は中学3年生で早朝に自転車で新聞配達をしていた。雨が降る中、道路脇のやぶに何かが横たわっていることに気付いたが配達を優先。下校後、親戚と現場に足を運び、遺体を発見したという。「あの時、すぐに通報していたら助かったかもしれない」。そう後悔する男性に、「見つけてくれたことには感謝しかない」と遺族が強調していたことを伝えた。現在、東北で暮らす男性は警備会社で働いている。

   過去の新聞記事をきっかけに、こうした出会いの場面に立ち会うことができた。記事を残してきた先輩たちに敬意を抱きつつ、自分も記者として襟を正した。(河村俊之)

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