JR苫小牧駅南口で廃虚化が進む旧商業施設「苫小牧駅前プラザエガオ」を巡り、6月13日に苫小牧市役所で行われた「トップ会談」。苫小牧市の岩倉博文市長と、土地の一部約1070平方メートルを所有する不動産業・大東開発(若草町)の三浦勇人社長が意見を交わしたが、両者の主張は平行線をたどった。その後はトップ会談が開かれることはなく、課題解決の道筋はいまだ見通せない。
◇
2人は6月13日午前11時25分ごろから、市役所5階の市長応接室で約50分間、非公開で面談した。「公の場」で初めて会ったが、開催直後はいずれも内容を明かすことなく、足早に会場を後にした。その後市議会定例会の一般質問で、岩倉市長が答弁でその一端を説明した。
説明によると、岩倉市長は2020年度に都市再生コンセプトプラン、22年度に苫小牧駅周辺ビジョンを策定したことに加え、同施設の土地と建物の権利集約に協力した元地権者の思いを伝えた。一方、三浦社長は、三星発祥の地を守りたいという強い思いに加え、5筆の自社の土地を北西の角地に集約し、事業をしたいという考え方を改めて話したという。
◇
両者のトップ会談はその後、開かれていない。市総合政策部の町田雅人部長は「トップ会談は必要に応じて行う。市民の思いはわれわれも受け止めており、一日も早い解決を目指し、粘り強く交渉をしていきたい」と説明し、担当者レベルで協議を続ける。
同施設は1977年11月、「苫小牧サンプラザ」の名称でオープン。当初は多くの買い物客らでにぎわったが、商業環境の変化で中心街は衰退し、2005年11月に核テナントのダイエーが撤退。06年3月に「エガオ」に改称するなどてこ入れしたが、14年4月に施設を運営するサンプラザが自己破産申請し、同8月までに全テナントが抜けて空きビルとなった。市は課題を解決しようと土地と建物の権利集約に動き、29法人・個人の地権者と交渉したが、大東開発のみが無償譲渡を拒否した。
市は問題が長期化する中、苫小牧駅周辺ビジョンでJR苫小牧駅南側にホテルや大型駐車場、公園などを配置する案を公表。エガオビルについて早ければ24年度に解体を目指すとし、今年度は同ビジョンの具現化に向け、苫小牧駅前再整備計画の策定を進めている。同ビルについても解体費を試算する方針だが、市民や事業者にとって魅力的な計画ができ、中心街が再生できることを多くの市民が望んでいる。
(室谷実)