皮膚科における生物学的製剤による治療 苫小牧医報

  • ニュース, 医療のお話
  • 2023年12月12日
皮膚科における生物学的製剤による治療
苫小牧医報

  皮膚科の臨床の現場で多く見る疾患に「アトピー性皮膚炎」と「乾癬(かんせん)」があります。どちらも慢性に繰り返す炎症性皮膚疾患であり、ステロイド外用薬を主体とした従来の治療ではコントロール不良な難治例も多く見られます。

   しかし、近年、これらの疾患の病態は分子レベルで解明が進んでおり、それに伴い治療もこれらの疾患の原因となる責任分子を抑制するという考えに基づいた生物学的製剤と呼ばれる新薬が承認され使用できるようになってきています。

   これらの生物学的製剤により今まで治療に難渋していた症例も劇的に改善する例がしばしば見られ、将来的に重症や難治の症例の治療の主流となるのではと期待されています。ただし、この薬剤を使用する場合には免疫への抑制的な作用による肺炎等の感染症発生に留意する必要があることから、ほとんどの内服薬と注射薬は使用前の内科的な検査や使用中の副作用出現時の対応が必要となります。そのため現在は使用経験のある皮膚科専門医が日本皮膚科学会から承認を受けた施設で処方するように限られており、苫小牧市では当院だけです。

   生物学的製剤は有効性の高い薬剤ですが、欠点としては薬剤が高価であることが挙げられます。理由は製薬会社が研究開発するために多額の費用がかかるためです。そのため実際に治療を行う場合、患者さんの費用的負担が大きくなるため高額医療の制度等を使い少しでも負担を軽減することも考慮する必要があります。

   一方、生物学的製剤の外用薬に関しては、処方に当たって承認施設である必要はなく内服や注射と比べ患者さんの費用的な負担は大きくはないため、多くの皮膚科医院で処方されています。しかし、比較的容易に処方できてしまうがゆえに問題もあります。医師の薬剤への誤った認識や適応症例以外への使用による症状増悪例が散見されています。当然ながら外用薬を用いる場合も医師の生物学的製剤の正確な理解が必要となります。

   生物学的製剤は病態生理の解明が進むとともに現在も新薬開発が進んでおり、皮膚科の治療も今後、大きく躍進することが期待されています。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。