【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会は8日午後(日本時間9日午前)、イスラエル軍が戦闘を拡大するパレスチナ自治区ガザでの「人道目的の即時停戦」を求める決議案を採決したが、米国が拒否権を行使し否決された。15理事国のうち日仏中ロなど13カ国が賛成し、英国は棄権。反対は米国だけだった。
10月7日に始まったイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘を巡り、米国が拒否権を発動したのは2回目。ウッド米国連代理大使は、採決後の演説で「決議案(の内容)は現実から懸け離れており、現場での前向きな動きをもたらさない」と反対理由を説明した。
決議案はアラブやイスラム諸国を代表して、アラブ首長国連邦(UAE)が提出。ガザの人道状況が「壊滅的」だと強い懸念を表明するとともに、ハマスが拘束する人質全員の解放を要求していた。ハマスへの非難は盛り込まれていない。UAEによると、中ロを含む約100カ国が強い賛意を示す共同提案国となった。
グテレス国連事務総長は6日、「事務総長は安保理に注意を促すことができる」とする国連憲章条の規定を任期中で初めて発動し、人道目的の停戦を宣言するよう安保理に要請した。8日の会合でも、ガザの人道状況は「悪夢」だとして「今こそ行動を起こす時だ」と強調。決議案への支持を各国に訴えていた。
パレスチナのマンスール国連大使は否決後、報道陣に対し「きょうは安保理の歴史に残る悲しい日だ」と語った。その上で「諦めない」とも述べ、国連総会で停戦実現に向けた機運づくりを進めていく考えを示した。