登別市登別本町2の「知里幸恵 銀のしずく記念館」で、新収蔵資料展が開かれている。幌別村(現登別市幌別地区)と関わりが深く、アイヌ文化の研究者として知られた英国聖公会宣教師ジョン・バチェラー(1855~1944年)によるアイヌ語の「辞典」第4版と、幸恵が父の高吉宛てに書いたクリスマスカードの2点を並べる。18日まで。
「辞典」は1938年10月に岩波書店から発行された。同年12月21日付で「深い尊敬を込めて編さん者から大切な旧友レーンご一家へ」とバチェラー直筆の英字サインが添えられている。「レーンご一家」とは旧北海道帝国大学予科(現北海道大学)で英語教官をしていたハロルド・レーン、ポーリン夫妻のこと。
レーン夫妻は太平洋戦争開戦当日の41年12月8日、スパイと疑われて無実の罪で逮捕され、後に米国に送還された。「辞典」は夫妻から何らかの形で北大教授の安保常治氏(03~70年)の手に渡り、幸恵の弟の真志保と交友があった安保氏の子孫が同記念館に寄贈した。
同資料展は幸恵の著書「アイヌ神謡集」の刊行100年を記念した企画。同館を運営する知里森舎の松本徹理事長は「辞典は、幸恵の伯母の金成マツがアイヌ語をローマ字で表記する基となった。アイヌ神謡集の源泉ともいえる資料で、ぜひ見に来てほしい」と呼び掛けている。
午前9時半~午後4時半(受け付けは同4時まで)、火曜休館。入館料は大人500円、登別市民250円、高校生200円、小中学生100円。友の会会員は無料。問い合わせは同館 電話0143(83)5666。