岸田文雄首相(自民党総裁)は7日、自身が会長を務めてきた岸田派(宏池会)を首相在任中は離脱すると表明した。党内の派閥による政治資金パーティー収入の裏金化疑惑を受け、国民の信頼回復と再発防止に取り組むには派閥と距離を置く姿勢を示す必要があると判断した。ただ、対応が後手に回っているとの批判も強く、事態の沈静化は見通せない。
首相は「私自身、先頭に立って政治の信頼回復に努力する」と首相官邸で記者団に強調。「その際、党内には無派閥の人間も大勢いるので、総理・総裁の任にあるうちは派閥を離れるのが適切な対応だと考えた」と離脱理由を説明した。
麻生太郎副総裁ら派閥領袖(りょうしゅう)を務める党役員に同様の対応を求めるかについては「考えていない」と明言。後任の岸田派会長人事に関しては「派閥で判断する」と語った。同派は会長ポストを当面空席とする方針だ。
自民党出身の首相は近年、政権発足に伴い派閥を離れる例が多かった。しかし、岸田首相は2021年10月の就任以降も岸田派会長にとどまり、党内から「派閥政治を引きずっている」(菅義偉前首相)と批判が出ていた。
首相は6日、派閥による政治資金パーティーや忘年会・新年会を当面自粛するよう党幹部に指示しており、2日連続の対応策発表となった。
自民各派は7日、それぞれ東京都内で開いた例会で、自粛の指示に沿って対応することを確認した。最大派閥・安倍派(清和政策研究会)座長の塩谷立・元総務会長は「忘年会や新年会を中止する」とした上で、同派の裏金疑惑などに関して「事実関係を慎重に調査し、適切に対応していく」と語った。
自民の茂木敏充幹事長は党代議士会で「強い危機感を持つ必要がある」と指示内容の徹底を呼び掛け、官邸で首相に各派の対応状況を報告した。