白老町と町環境町民会議は2日、町コミュニティセンターで「しらおい環境セミナー」を開いた。町民約50人が、町日の出町と社台に広がり、貴重な自然環境と評価されているヨコスト湿原(面積33ヘクタール)の魅力と保全の必要性に理解を深めた。
同湿原には道内でも数少なくなった自然海岸が残り、背後に砂丘、湿地、草原、樹林帯と多様な環境を形成する。息づく動植物もさまざまで2016年に環境省の「日本の重要湿地」に選定されている。
セミナーでは、町から受託し22、23年に同湿原の環境を調査したエイト日本技術開発の瀬島義之プロジェクトマネジャーが「ヨコスト湿原で分かったこと~そしてこれから」のテーマで講演した。
瀬島さんは湿原を把握するため、ドローンによる空撮、ウツナイ川とヨコスト川の水質確認、植生や野鳥の種類の調査などを実施。水質では、水素イオン濃度(pH)や、河川に生息する微生物が水の汚れの原因となる有機物を分解する際に消費した酸素量(BOD)が良好で、特に電気伝導率が高い値を示し、「栄養に富むために背丈の高い植物が繁茂している」と述べた。
植生では、絶滅危惧が指摘されている水辺性植物23種が見つかったとし「さらに詳細な調査を進めることで新たな絶滅危惧種が発見される可能性がある」と指摘した。ハマナスについても言及し、「胆振管内では白老町内の沿岸部にのみ群生地が残っている」と語り、保全の必要性を訴えた。
野鳥はオオジシギやノビタキなど69種を確認し、「地元の皆さんは調査ができる能力を備えている」と町民有志による調査能力を高く評価。今後の水質調査や湿原全体の鳥類調査などを継承するよう呼び掛けた。
町環境町民会議は2008年7月に町民有志により発足。湿原の環境保全や価値の理解促進を目的とした清掃活動やセミナー、児童向け学習会や観察会などを年間事業として実施している。