札幌の円山動物園で今年8月に生まれたアジアゾウの「タオ」を見に行った。正直そんなに関心はなかったが、実物を見たら興奮した。考えてみればゾウの赤ん坊なんてめったに見られない。平日にもかかわらず開園直後でゾウ舎入館の待ち時間は60分。来園者は柵越しに「見えた」「見えない」と大騒ぎだった。雪虫が異常発生した日で俯瞰(ふかん)すれば赤ちゃんゾウ以上のインパクトだったはずだが、皆お構いなしでタオに熱視線を注いだ。人気動物の力恐るべし。
ゾウは共感し合う能力が高い社会的動物で助け合い、喜んだり悲しんだりし仲間の死を悼むという。人々を魅了するのはそんな人間じみた部分か。タオは相手と鼻を絡ませて匂いを嗅ぎながらコミュニケーション。スキンシップで感情を伝えているようだった。生後2カ月余りで体重は2倍超の約230キロ。次に見る時、どのくらい成長しているか楽しみだ。
東京の上野動物園も双子のパンダ(2歳)目的の観光客でごった返している。コロナ禍の反動もあろうが有名観光施設は軒並み異常な人混みで、一部では交通インフラがパンク。うまく人を分散させる方法はないものか。いわゆるオーバーツーリズム。馬産地の胆振・日高にもいつかそんな波は押し寄せるのか。(輝)