がんは、進行に伴って全身の倦怠(けんたい)感や食欲不振、睡眠障害などのさまざまな症状が出る。とりわけ、痛みは症状の中で早い時期から現れ、最期まで続くといわれる。がん患者の痛みの緩和医療について、国見病院(大分県国東市)の鹿田康紀院長に聞いた。
▽さまざまな痛み
がん患者に起こる痛みには(1)がん自体が原因の痛み(2)治療が原因となる痛み(3)その他の原因による痛み_の三つがある。「2001年に米国のがん学会で、がんが原因の痛みは85~95%取り除くことができるものの、痛みが十分に緩和されている患者さんは50%程度にとどまっているとの報告があり、国内でも痛みの治療を含めた緩和医療に力を入れるようになってきました」
がんの痛みは診断時に既に20~50%、進行がんの場合は70~80%の患者に存在するとされる。治療の進歩でがん患者の生存期間は延びているが、「痛みが緩和できないと、苦しむ時間が長くなる可能性があります」と鹿田院長。
痛みが強いストレスになり、睡眠障害なども引き起こす。「体力が低下してしまうことで、治療可能な選択肢があるにもかかわらず、治療が受けられなくなる可能性が懸念されます」
▽治療の選択肢
痛みが軽い場合、NSAIDs、アセトアミノフェンと呼ばれる鎮痛薬でも緩和できるが、病状が進行した患者では十分でないことがある。その場合は、オピオイド鎮痛薬と呼ばれる医療用麻薬の量を調節しつつ、(1)痛みで眠りが妨げられない(2)安静にしていれば痛まない(3)体を動かしても痛みが強くならない_という3段階の治療目標をクリアしていくのが基本だ。
がんの痛みを抑える薬には、さまざまな形があり、選択肢が増えているという。高齢のがん患者では、薬の飲み忘れや口から薬を飲むことが誤嚥(ごえん)リスクとなる人もいる。「その場合は、貼るタイプの鎮痛薬が有効。家族が目で確認でき、誤嚥の心配もありません。正しく貼ることで薬の濃度が安定し、持続的な効果が期待できます」
他にも座薬や注射、シロップ剤などがあり、その人に有効かつ利便性が高い方法を選ぶことができる。がんの痛みを我慢しないことが最期まで生活の質(QOL)を保つことにつながる。
(メディカルトリビューン=時事)
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