飲酒

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2023年11月29日
飲酒

  酒を、礼儀を失うことなく、きちんと飲むことができる大人になりたいと思っていた。自宅でたまに開かれる大人たちの酒盛りが大好きで、なぜか親の近くに座り、炭坑節の合唱や歌謡曲に合わせてハーモニカで伴奏をしていたのを覚えている。思えば不思議な子どもだった。

   20歳の頃、時間があると、訓練のつもりで安い酒と酒器を買って来て一人で酒を飲んだ。自分がどれだけ飲めるのか、どう酔うのかを確かめたかったのだ。実に弱かった。友人や時には取材相手とも飲むようになり、酒飲みの理想型のようなものが自分の中に徐々に出来上がってきた。とにかく楽しく飲むこと。「ただ酒」は飲まないこと。女房や子どもに言えないこと見せられないことはしないこと。社会性のある怒りを話すこと―。

   先日の新聞で、厚生労働省の検討会がまとめた飲酒に伴う危険を周知する指針が報道された。コロナ禍が山を越し忘新年会の復活の流れへの対応なのか、国がこの種の指針を示すのは初めてとか。いわゆる飲酒量ではなく、摂取したアルコール量の厳密な掌握が大切。長期、多量の飲酒が依存症や生活習慣病、転倒の危険を高めることなどが紹介されていた。山ほどの後悔に手術の記憶も重ねて繰り返し読んだ。さて周囲の評価は―。(水)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。