半世紀

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  • 2023年11月20日
半世紀

  きのうまで苫小牧市美術博物館が開いた特別展「出光美術館近代美術名品選」。9月23日の開幕から前期と後期に分けたロングラン開催で、日本に西欧の表現が入った明治以降の絵画や工芸品などを無料で公開した。記者も芸術分野は門外漢だが足を運び、芸術の秋に浸った。

   個人的に味わい深かったのは、小杉放菴が昭和6(1931)年に描いた「さんたくろす」。腰が曲がり長いつえを突いたお年寄りのサンタクロースが、雪の中をとぼとぼと歩いている風景で、まさに和洋折衷の趣。「本物」に触れられた貴重な機会に感謝したい。

   出光興産北海道製油所が操業50周年記念で特別協力して実現した催事。同製油所は節目のたびに出光美術館の作品を貸し出してきた。1973年9月の操業開始以来、本業を通して地域経済の発展、エネルギーの安定供給に尽くし、芸術や文化の振興にも寄与している。半世紀にわたり地域に根差す大手企業の力だ。

   脱炭素社会の実現に向けて、二酸化炭素の排出源である化石燃料を取り扱う企業は、厳しい目を向けられる昨今。同製油所も変革に挑戦し、新たな技術の社会実装を急いでいる。その名の通り産業を興し、地域になくてはならない存在で、あり続けてもらいたい。    (金)

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