３８年前、奇跡的に甲子園球場でのプロ野球日本シリーズの内野席チケットが手に入った。当時は価値がいまひとつ分からず「ラッキー」くらいの感覚だった。それでも応援グッズを買い込み、観戦を楽しみにしていた。

　 　観戦の数日前、大学の先輩からアルバイトの交代を頼まれ、観戦がおしゃかになった。学生寮全体でカバーしていたバイトなので、残念だったが快く交代を受け入れた。甲子園行きの２枚のチケットは購入価格で友人に譲った。

　 　この年の４月、甲子園の伝説となっているバース、掛布、岡田のバックスクリーン３連発が飛び出して阪神タイガースが快進撃。ペナントレースを制して西武ライオンズとの日本シリーズに進み、日本一に輝いた。

　 　そして今年、阪神タイガースが３８年ぶりの日本一。毎度のことながら、不正の転売チケットは数十万円にもなったという。音楽のコンサートなどは定価の１０倍にもはね上がることがあると聞く。今でも購入者の気持ちは理解できないが、３８年前のシリーズをあっさり見逃したのは一生の不覚だった気がしてきた。観戦の機会はまた必ずある―と思ったが、ずっとチャンスは来なかった。３８年前に逃がした魚は大きい。　　　　　（高）