2018年9月に発生した胆振東部地震から5年が経過したのを受け、むかわ町の道の駅「四季の館」で7日に開かれた同町主催の復興創生・共創アドバイザー講演会。町復興創生・共創アドバイザーを務める朝比奈一郎氏が「指導者」ではなく「始動者」としてのリーダーの必要性を説き、パネルディスカッションでは朝比奈氏のほか3人の町民がパネリストとして登壇した。まちの課題やそれぞれが描くまちづくりについて、町子育て応援事業「むかこみゅ」を手掛ける三上誉人氏をファシリテーター(進行役)に語り合った内容を2回に分けて紹介する。
ITに強い町
舛田那由他氏 全部をいいまちにするにはお金やいろんなものが足りない。何かに特化した方がいいと考えた時にIT(だと思う)。雇用の場合、ラピダスがうまくいった時に関連した仕事が来るだろうし、近くの地域を見た時に「むかわ町はITに強い」となれば、従業員や関連会社の方が30分ほど離れていてもむかわ町を選んでくれる。ラピダス以外にも企業を誘致することができるのでは。
例えば小中高校でITに強い教育を少しでも取り入れ、むかわ町に移住して教育を受けることでITに強い人材が育つことをPRできれば。子どもの時に日高町の富川から引っ越してきた友達が「スケートで一番速かった」と言っていたが、むかわでは遅い方だった。むかわ町は知らずのうちにスケートのレベルが高くなったように、IT分野で小学生でもプログラミングが当たり前にできるような町になれば、雇用も生まれるし、むかわ町出身の子どもが世界に羽ばたいていけるのではないか。
安心して暮らし 続けられる町
椿文子氏 むかわ町に戻ってきて最初は自然が多くて子育てする環境もいいと思っていたが、年齢を重ねていくにつれて「このままむかわ町に住み続けられるのか」という不安要素が出てきた。例えば車が運転できなくなったり、一人で残された時に大丈夫なのか。医療やサポート、高齢者の施設を充実させられないか。それぞれの年代で安心して暮らせる子育てサポートや雇用、企業誘致ができれば子どもも将来(町内で)働くことができるのではないかと考える。
高校で札幌に行ってしまう子がいると思うが、むかわ町に恐竜に特化した学科など個性を生かせるような場があれば、そこに集まってくる子もいるのでは。
波動が交わる町
奥野恵美子氏 前委員長として、まちづくり計画を皆さんで考えて策定したが、リーダー(始動者)になる人がたくさんいると感じた。農業や漁業、林業、商工会、一般の主婦、さまざまな団体の方がいるが、町に対する思いはみんな同じ。一方でなかなかアクションを起こせない人もいて、そういう人の声を拾い上げ、伝えていくリーダーも必要。まちづくりに関わったものとして声を拾って、さまざまな波動を一つにするのではなく、小さな芽が交わったところで、さらに大きな波動にしていけたら。
始動者がいる町
朝比奈一郎氏 むかわ町は恐竜と言っているが、穂別地区まで行かなければ見ることができない。町民への聞き取りの中で一様に言っていたのは、穂別と鵡川の連携が弱いということ。距離の問題もあるが、鵡川地区にサテライト的な発信の拠点があって、そこから穂別に行くような流れができないかと、よそ者的には思う。
半導体やAI(人工知能)で世界に対抗するのは難しいかもしれないが、農業は可能性があると思う。イチゴやニラ、アスパラは世界一おいしいとか、そういうところで勝てる気がする。発信の仕方を変えるようなプロジェクトがあれば面白いのでは。