松野博一官房長官は9日の記者会見で、岸田文雄首相と政務三役が給与改定に伴う増額分を国庫に返納すると明らかにした。臨時国会で審議中の国家公務員特別職の給与法改正案が成立後、返納を申し合わせる。松野氏は「賃上げや物価上昇の状況に鑑み判断した」と語った。
物価高が続く中、首相や閣僚らの給与引き上げには野党から批判が相次ぎ、公明党からも増額凍結論が出ていた。
松野氏は、改正案を成立させる方針に変わりないと強調した一方、「国民から批判を頂いていることも事実だ」と説明。「首相や政務三役自身を利する考えは全く持ち合わせていないが、万が一にも国民の不信を招くことがあってはならない」と述べた。
改正案は会計検査院長や人事院総裁も対象。立憲民主党が国会提出を予定する給与を据え置く修正案については「政務三役のみを据え置くと、公務員全体の給与体系を崩す」(松野氏)として拒否する。
改正後の年間給与額は首相が46万円、閣僚が32万円、それぞれ増える。現在、行財政改革の一環で首相は給与の3割、閣僚は2割を自主返納しており、増額分の返納についても閣僚懇談会で申し合わせる。国会議員が就いている官房副長官や首相補佐官も対象にする。
与党は10日の衆院内閣委員会で改正案を採決する構え。立憲の長妻昭政調会長は会見で「自主返納は姑息(こそく)な手段だ」と批判した。返納を主張してきた日本維新の会の馬場伸幸代表も会見で「政治家の給与を上げることは、ほぼ国民全員が疑問に思っている」と指摘した。