岸田文雄首相が打ち出した所得税・住民税の定額減税を含む総合経済政策がいまひとつ評判が良くない。数的優位の政府・与党なので今臨時国会で成立するのだろうが、その論議には注目したい。
政策の一つは可処分所得の増加や物価高対策として1人4万円の定額減税と生活困難世帯への7万円の追加給付。二つ目は企業における来春の大幅な賃金引き上げ。企業間の適正取引も推進し中小企業の賃上げにもつなげたい考えだ。
この賃上げと減税効果で物価上昇分以上に国民の可処分所得が増えれば、国内経済に好循環が生まれ、「完全なるデフレ脱却」を実現するとの構想を描く。
ただ、首相の思惑通りに進むか懐疑的な部分が多い。定額減税の時期が来夏のボーナス支給時に合わせた実施で、物価高対策の効果が先延ばしとなる。定額減税よりも給付金の一括支給や消費税減税を求める声も大きい。賃金アップは企業頼みで、政治の力にも限界がある。
今後の防衛費増額や異次元の少子化対策に伴う財源見通しは立っておらず、近い将来の国民負担増は必至。政府・与党は「首相がやると言うなら従う」とどこか投げやりだ。元首相が放った「3本の矢」は結局、国の借金が大幅に膨らんだ。もう経済実験の失敗は許されない。(教)