白老町の町民有志4人が8日、白老屋外写真保存会(村上英明会長)を発足させた。同町の虎杖浜、社台地区の建物の壁面に展示されている巨大写真の保全に活動する会で、写真には昭和時代に水産のまちとして栄えた両地区の日常風景が写っており、当時の様子を今に伝えている。村上会長(54)=東町=は「地元ゆかりの作品に愛着を感じ、関心を持ってもらえる取り組みを広げていきたい」と意気込んでいる。
巨大写真は2021年10月、文化庁や町民でつくる芸術文化活動・ウイマム文化芸術プロジェクト実行委員会が、虎杖浜地区の昭和の風景と記憶をよみがえらせようと制作し、同地区の海岸通りの建物15カ所に約20点を展示したのが始まり。国際的な美術作家・奈良美智さん(63)が企画展示アドバイザーを務め、屋外写真展として開催した。
翌年以降は社台地区にも同様の活動が波及し、現在は両地区の計34カ所に44点が展示されている。
同実行委による屋外写真展の取り組みは今年で終えたが、活動に関わった町民有志らが同保存会を立ち上げ、活動を継承することにした。
両地区は海に近く、潮風で写真の劣化が進みやすい。このため、同保存会では特殊なコーティング材を表面に塗る作業が年2回ほど必要とみている。昨年12月には同保存会創立のきっかけとなる町民有志の塗布作業が行われており、今後も町民に協力を呼び掛けながら活動していく考え。
村上会長は1年でも長く作品を保存していくため、「保全活動を”作業”ではなく、みんなで手分けして楽しく取り組める”イベント”として進められるようにしたい」と前を向く。
虎杖浜地区の写真は、王子製紙苫小牧工場の社員で同工場カメラ会所属だった山崎壽昭(としあき)氏(1927~2015年)が仙台藩白老元陣屋資料館に寄贈した作品を引き伸ばしたもの。昭和30~40年代の同地区で水産品加工に従事する女性などが活写されている。社台地区は、同地区ゆかりの町民、中出満さん(72)が撮った記録写真を使い、漁にいそしむ男性たちなどが写っている。
まちの歴史や文化を、身近に感じることができる資料だけに、活動資金の確保については同保存会の活動に理解を広げることで協力を得られるようにしていきたいという。